セッション5のテーマは「おなかの空間と大腰筋」です
セッション4はコアの底の部分にアプローチしたので、今度はコアの前と横にある「おなか」にアプローチしていきます。
「おなかにいったい何をするの?」
「緊張してるのは背中や腰なんだよね~」と思われる方もいるかもしれません。
腰や背中が硬く、突っ張ることの実感はあってもおなかではそれをほとんど感じません。
でもおなかって気がつかないけど緊張しているんです。
カチカチになっていてもなかなか気がつくことができません。
おなかの緊張のために腰や背中が痛くなっているのに、マッサージを受けてしまうともっと治らなくなってしまいます。
言葉だけではなかなか伝わりにくい部分だと思います。
腰や背中の痛みのナゾにも関係しているので出来るだけ簡単に説明してみます。
憧れのふっくらシュッとしたおなか
ご自分のおなかを触ってみて下さい。
みぞおち、脇腹、おへそのまわり、下っ腹
どこか固かったり、柔らかかったりしませんか?
左右差があったり、上の方と下の方で柔らかさが違ったりします。
おなかの硬さだけでもカラダのバランスがわかるほど全身を反映しています。
見た目で「ほっそりしているのが良い」
「ぷよっとしていては良くない」というわけではありません。
健康的に良いのは見た目が良いのではなく柔らかすぎず、固くないおなかです。
「最近お腹が出てきた」と思ってこんな腹筋運動を頑張ってしていませんか?
確かにこうやって腹筋を鍛えているとおなかの上の方は硬くなってきます。
でも「下っ腹」は全然引っ込んできませんよね?
このような腹筋運動をしても「下っ腹」は凹みません。
「上っ腹」が硬くなっていて、それを補助して硬くなっているだけです。
こんな運動をしていると実は逆効果になっていたりするんです。
「上っ腹」がメインで「下っ腹」を使わない方法をカラダが覚えてしまうので、「下っ腹」はどんどんエコモードになってしまうからです。
おなかの上の方が硬くなると、みぞおちのあたりが凹んで猫背になりやすくもなります。
ここが硬くなると呼吸もしにくくなってしまいます。
見た目はキュッとなりますが、長続きしませんし、健康に良くありません。
健康にも良くて、見た目も美しくなるにはこのような「ガチっと固める腹筋運動」では出来ないのです。
まず、このように腹筋を鍛えるというイメージをリセットしていきましょう。
カラダを支えるためのおなか
カラダを後ろへ反らせるせなかの筋肉がカラダを支えているというイメージは持ちやすいと思います。
でもおなかの筋肉がカラダを支えてくれているイメージって持てますか?
なかなかイメージしにくいのではないでしょうか?
腹筋にはカラダを丸める働きがあります。
カラダを起こすときにはカラダを曲げて持ち上げるのに腹筋が必要です。
これはイメージや実感がしやすいですよね。
でも立った時はおなかの筋肉はどんな働きをしていると思いますか?
イメージしやすい例えとしては、立っている時のおなかの筋肉・筋膜のイメージは「筒」です。
一つの筋肉で支えているというよりも、前・横・後ろの筋肉・筋膜がバランスを保って「筒」のようになってほしいのです。
この状態でカラダが捻じれると綺麗なくびれも出来てきます。
くびれを作るように斜めの腹筋を鍛える方法をよく雑誌などで見かけます。
続けていると筒の側面は引き締まってくるのでくびれは出来てきます。
しかし筋肉を縮めて鍛えているので、この筒は崩れてキュッと圧縮されることになります。
この筒が縮むとカラダ全体も縮みますし、背骨にもつぶれる力が働きます。
この筒がつぶれてしまうと結局はたわんでしまい、内臓が支えきれずにそのうちに横にはみ出してくるようになります。
「カラダが縮む」、「背骨がつぶれる」、「内臓がはみ出してくる」
これはカラダが老いていくということです。
いつまでも若々しいカラダでいるために、腹筋をしているのにそれはカラダを縮めるという老化に繋がっていたりするのです。
美しい姿勢や体系を保つのに腹筋運動をたくさんする必要はありません。
足元がしっかりしていれば、自然とおなかが活動するようになっています。
この時に活動するのが下っ腹です。
カラダがしっかりするのに大切なのは上っ腹よりも下っ腹です。
「足腰を強くする」という言葉があるように、足を使うことで下っ腹は働くのです。
動き回っている中で自然とおなかが働いて腰回りがしっかりしているなら、腰痛なんてなりません。
腰が痛い、背中が痛いの謎
背中や腰が突っ張る、痛いという方は多いと思います。
確かに腰や背中の筋肉や筋膜は硬くなっています。
でも、なんで腰や背中が固くなってしまうのでしょうか?
痛み知らずになりたいならここが大事なところです。
1つはこれまでお話していたように、足元からしっかり支えられていないため。
もう1つはおなかとせなかのバランスの問題があります。
おなかとせなかの筋肉は真ん中にある背骨までの距離が違います。
せなかは背骨が近くにあるのに、おなかと背骨はかなりの距離があります。
おなかの筋肉は背骨を動かすのに有利になっています。
これに対してせなかの筋肉はかなり頑張らないとバランスがとれません。
せなかは距離的に背骨を動かすのに不利な場所にありますが、一部分ではなく全体でギュッと働いて、おなかの筋肉以上の力を出します。
「腰やせなかが板みたいだ・・・」
これはとても当たっています。
カラダを支えるためにせなか全体を緊張させて板のようにして守っているのです。
もしかしたらせなか側の筋肉が硬くなっているのは、おなか側の筋肉が余分に縮まっている、引っ張っていることに合わせてバランスをとっている結果かもしれないのです。
- 長時間のデスクワーク
- 丸まって本やスマホをみる
- 重いものを持ち上げる
- おなかを縮めて座る
- 暴飲暴食、不規則な食生活
- 多すぎるお酒、アルコールを飲む
などなど
誰でもいくつか当てはまるのではないでしょうか?
痛んだり、突っ張ったりしてせなかは厄介者のように思われていますが、仕方なく頑張ってくれているかもしれません。
気持ち的にストレスがかかって「胃がキリキリする」ということは誰にでもあると思います。
緊張したり、イライラしたり、心配事があると胃などの内臓が緊張します。
食べ過ぎたり、不規則な食生活をしていても内臓は緊張します。
内臓の緊張はおなかを内側から引っ張ってしまいます。
おなかが引っ張られていてもカラダを真っ直ぐにするためにせなか側の筋肉は頑張っています。
腰や背中が痛いからと言って、ここをほぐしたり、マッサージしてもバランスが崩れていたらまたすぐに戻ってしまいます。
むしろむやみに緩めたり、ほぐすのはその場の気持ちよさだけで、バランスを崩しているかもしれません。
大切なのは『足元がしっかり』『前後バランスよく』です。
腰やせなかが痛いというかたは特に、おなかとせなかのバランスをとってせなかに負担がかからないバランスをとる事が大切です。
「おなかを鍛える」の誤解
「おなかの筋肉を強くしましょう」
病院でもこんな言葉が飛び交っています。
でも本当にそうでしょうか?
確かにおなかの筋肉がフニャフニャでは困ってしまいます。
でも筋肉を鍛えるってキュッと力が入る動きを反復するというイメージがありませんか?
こんな運動をたくさんすると、筋肉は太くて硬くなります。
見た目は格好良くなりますが、楽なカラダにはなれません。
これまでお話してきたように、おなかが縮むと、丸くならないためにせなかにも力が入ります。
前と後ろから引っ張られると、カラダは縮んでいきます。
このような腹筋運動はあまりおススメできません。
斜めにカラダを持ち上げても同じです。
絶対に良くないとは言えませんが、ちょっとひと工夫必要です。
簡単にできる運動でしたら、おしりを持ち上げる運動の方がおススメです。
おしりを持ち上げてるのにおなかに効くの!?
と思われるかもしれませんが、不安定なカラダを安定させる時におなかは働きます。
足と一緒に使っているので、トレーニングの時だけでなくて立った時にも生かされるのです。
筋肉の王様「大腰筋」
「大腰筋」は本や雑誌にも良く取り上げられている筋肉です。
楽なカラダになるためにとっても大切な筋肉とされています。
この筋肉が特別扱いされるのにははっきりとした理由があります。
なんと、大腰筋はせぼねとあしを繋いでいるのです。
こんな筋肉は大腰筋だけです。
大腰筋は股関節を動かす筋肉です。
でもその出発点はおへそより上の部分から始まっています。
そして内臓を横切ってあしまで到達します。
つまりカラダのとても深い部分にある筋肉なのです。
この筋肉が働くとカラダの奥の方からしっかりと安定します。
大腰筋が働くと姿勢が良くなります。
奥の部分が働くようになるので疲れにくくなったり、余計な肉や脂肪をつけなくて済むためスタイルアップにもなります。
そして内臓の働きや血流までも良くなっていきます。
元気になるために大腰筋が働くカラダにすることが大切です。
逆に大腰筋が働くカラダであればとっても元気なハズです。
大腰筋のはたらき
わかりやすい動きとしては、大腰筋が働くと股関節が曲がります。
大腰筋はただキュッと縮んで股関節を曲げているのではありません。
深い部分にあって、2本の長い脚の軸のようになっているので、どんな動きの時にも仕事をしています。
だから重りをつけて鍛えたり、ギューッと伸ばせば大腰筋は良くなるというのは大間違いです。
そもそも、鍛えたり、伸ばすことが難しい筋肉なのです。
やっているつもりでも他の筋肉がメインに使って動いていたり、伸ばしたりしてしまいます。
姿勢が悪い、足腰が弱い方はセルフエクササイズもなかなか難しい筋肉なのです。
大腰筋を上手くつかうためには?
前にも話したように筋肉はただ縮むだけでは上手くいきません。
でも縮むことさえできないと、伸びたり、捻じれたり、バネのような動きが出来ません。
まずは「wake up!」してもらうことが大切です。
セッション5では筋膜のリリースや刺激、動きを使って大腰筋のスイッチをONにします。
それから色々な動きの中で大腰筋を使えるようにしていきます。
こうすることで普段何気なく動いている時にも大腰筋が働くようになります。
どんな時にも働いてくれる裏方役なので、むしろご自分では大腰筋を意識しない方が上手くいくかもしれません。
セッション5だけではなく大腰筋を目覚めさせることは10シリーズの大きな目標の一つです。
大腰筋が使えているカラダはそれでもう十分に楽に動けているカラダです。
逆に大腰筋が使えていないカラダは何かの不調を抱えています。
それくら大腰筋が自然と使えていることがカラダにとって大切です。
これまでのセッション1~4は大腰筋が働きやすくなるような土台作りになっています。
セッション5ではようやく直接働きかけるというセッションです。
このセッションではカラダが大きく変化するセッションとなります。
このセッションはおなかと背骨の前の大腰筋をリリースしています。
すると今度は背中のセッションが必要になってきます。
セッション6はカラダのうしろ側をワークしていきます。